2023年7月3日月曜日

国産真空管試験機 DELICA TUBE TESTER (MODEL 1001) について

 

国産真空管試験機 DELICA TUBE TESTER MODEL 1001


上図は製造されてから半世紀以上経過している 国産真空管試験機 三田無線研究所で製造された真空管試験機です。製造ロットはシリアル番号から NO,650702 ですので 1965年7月2日製造日と推察できます。内部配線はきれいな手配線であり大量生産品とは異なります。58年経過していますが初期性能は不明ですが一応動作しているようです。投稿者は 無銭庵 仙人 と申します。道楽で音楽鑑賞はいまだに真空管アンプシステムを愛用しているものです。システム構造はほとんど3極管で構成されています。メーカー製組み立てキットおよび手作りアンプ類です。

この項目は海外のブロガー閲覧者から要望があった記載事項です。必要のない方は次項目の自作真空管試験装置へとジャンプしてください。

今回この試験機を投稿にあたり海外からの問い合わせがあり この試験機のDATA が見たいとのご要望により投稿です。何分骨董的な測定器であり販売されている数も少ないと思いますが 自己解釈により誤記載・誤解釈もあると思いますが参考程度の記載内容と理解ください。

この測定器を入手した時期は1980年代と思います。会社の測定器保管庫に長年眠っていた測定器を無償で入手した払い下げ品です。納品時に添付されていた 取扱説明書・試験成績書・真空管アダプター・ブラウン管アダプターは入手当時見つからずこの試験機のみの入手です。会社の固定資産に計上されていましたが購入後20年近く経過しており また当時真空管を使った機器を保守する数も数少なくなり 廃棄処分と同様の払下げ品です。

この真空管試験機は検体の真空管が正常に動作しているか ? をテストするのが主な目的であり 詳細な真空管動作状況を表示するのを目的とした真空管試験機ではありません。例えれば 今ここにある真空管は真空管として動作しているかを簡単に判別できるようになっていると思います。Ep-Ip-Eg などの特性グラフ等は作成できません。この測定器では Gm が測定できるので Gm=△ip/△eg から判明できるように 真空管のグリッドに可変電圧を加えプレートに流れる電流を計測して Gmの値を電流計で表示していると思います。憶測です。△eg 可変電圧とは電源周波数の交流電圧を検体のグリッドに信号源として入力し測定しているのではないかと思います。


検体 RCA 2A3 の gm 測定モードでの gm測定値

メーター表示をよく見ると表示板に赤色で表示された REPLACE ? GUOD  と記入された場所に指針があるとき真空管の良否のみを確認するための目盛です。上記表示であれば GUDO の位置を示していますので真空管は良品と表示です。
しかし現実の測定はこの測定器での gm 測定値を表示しており 表示数値は単位としてマイクロモ― 2100 MICROMHOS の表示です。上記測定は Pot.設定 L⇒Gm60  R⇒55 でGm直読設定です。添付されているデーター表には標準Gm数値が記載されており
2A3 の指定された項目には
挿入真空管ソケット A  スイッチA⇒2 スィツチB⇒10 フィラメント 2.5V  L,R Pot,目盛り設定値 L⇒67 R⇒55 Gm切り替えスイッチ 3000  測定押し釦 AMPL 

の項目が記載されています。この測定の前には左中央のロータリースィツチ目盛り1,2,3,4,5 のいずれかで電源電圧のキャリブレーションが必要です。メーター目盛り一番上部のLINE TEST の目盛りとなるように レオスタット LINE ADJUST のつまみを回し指針が丁度重なるように調整します。その後スイッチは TUBE TEST として AMPL 白色のボタンを押して測定します。


上図は真空管の良否のみのテスト画像です。L,R目盛りが L-67, R-55 にセットしてありますので表示から読み取れるのはこの真空管はエミゲンが進んでおり そろそろ交換時期ですとの表示です。直読Gm数値が 2100 でしたのでチャート表のGm数値 3000 と比較すると低いことが判明しますので真空管は劣化が進んでいると判断できます。ここで通常の真空管規格表にGm数値が記載されていますが 添付されているチャート表のGm数値とは異なっていますので真空管規格表のGm数値(5250μMHOS)を表示することはありません。注意が必要です。あくまでもこの真空管試験機での良否判定の数字であり 米軍の真空管試験機 TV-7A/U型のTEST DATA とは異なりますので 使うことができません。Gmとは相互コンダクタンスであり別記載方法では ジーメンスsiemens (S) で表す場合もあります。Gm=△ip/△eg 真空管の三定数 μ=Gm×rp   μ=増幅率  rp=真空管内部抵抗

参考 TV-7A/U での 2A3 を測定するための設定項目は

2A3 Filament 2.5  Selectors ER3-2000  Bias 67  Shunt -  Range  C  Press  3  Minimum value 38

上記が 2A3 測定するための TV-7A/U セッティング項目です。測定結果メーター指針数字が38以上であれば検体の真空管は正常である数値です。

参考として上図は米軍の真空管試験機 TV-7シリーズの TEST DATA FOR ELECTRONTUBE TEST SETS JANUARY 1962 です。以前 TV-7A/U を所有していましたが友人に譲渡したためデーター表の汚いコピーしか保有していません。
TV-7A/Uでは2種類の7本足真空管ソケットが搭載されています。軍用の送信管 1625 (807同等管)はソケット形状が7本足でラージ UT です。五球スーパーラジオに使われている 6WC5 も同じ7本足のソケットですがこのソケットはスモール Ut と呼ばれ円周の直径が異なりソケットとしては全く互換性はありません。1001型真空管試験機は大きなラージUTソケットは実装されていません。

DELICA TUBE TESTER MODEL 1001 内部構造

上記画像は真空管試験機 1001 型の内部構造です。使用している真空管は直熱両波整流管 UX-5Z3 , 5Y3-GT の2本だけでありよく見かける平滑コンデンサーは使われていません。大きく目立つのは 真空管2本・電源トランス・スイッチ類・各種真空管ソケット・標示用電流計・レオスタット(巻き線抵抗器,VR) です。下図で可変する箇所のつまみは一部HP測定器に使われていたものと交換しています。元々全数チキンヘッド型つまみでしたが 特に測定において設定変更時数多く回転するローターリースイッチなどは動作時つまみに大きな力が加わり破損してしまいました。


上図は測定器の各ソケット・スイッチ類の配置です。後ほど取り扱い説明文・DATA は jpeg掲載します。真空管種が少ない場合は搭載されている真空管ソケットで測定ができたのですが この試験機製造当時市場にはトランスレス仕様の真空管種も多く また複合管種も数多くあり 搭載されている真空管ソケットだけでは測定できないため 付属真空管アダプターが添付されています。アダプターはその昔付属品として見覚えがあるのですが 入手時不明のため新規同等品を工作しました。新規といえども工作した時期は今から20年以上前のことです。紛失したアダプターの同等品工作前は 不良となったGT管を壊しMT管ソケットを取り付けて計測していました。俗にいう真空管変換アダプターの工作での使用です。


上図は新規工作した真空管アダプターです。アダプターから本体への配線はUSプラグであり 本体のEと表記されているUSソケットにUSプラグを挿入して使用します。その時のスィツチA,Bの位置は A⇒1 B⇒1 とします。取扱説明書と同じとしてあります。端子台には各種真空管ソケットのピン番号と同じ配列で端子台に接続してあり 本体から端子台に接続する電線に真空管のどの部位であるかを表示してありますので真空管規格表・記載ピン番号に接続です。本体からの配線表示は

P(赤色)⇒プレート(陽極)    G(黄色)⇒コントロールグリッドG1(制御格子)  SG(桃色)⇒スクリーングリッドG2 (遮蔽格子)     K(緑色)⇒カソード(陰極)     H1(青色)⇒ヒーターもしくはフィラメント(織条)  H2(灰色)⇒ヒーターもしくはフィラメント(織条)
アダプター内部の各真空管ソケットとの並列配線
端子台 1番-茶  2番-赤  3番-橙  4番-黄  5番-緑  6番-青  7番-紫  8番-灰  9番-白  10番-黒

サプレッサーグリッドG3(抑制格子)が真空管内部で接続されていない真空管 6C-A7 に等については端子台でカソードとジャンパー線で接続します。又トッププレートなどの真空管の場合 P(赤色) は端子台に接続せず 変換金具でプレートと接続します。今回オーディオ用途の真空管を測定とするためアダプターには4種類の真空管ソケットを装備しました。7MT(7-Pin Miniature),9MT(9-Pin Miniature),US(Octal),Compactron の4種類です。コンパクトロン管についてはオーディオ用途として 6C-A10,50C-A10 しか測定することがなく足の数が12本ですがヒーターが1pinと12pin であり12pin は端子台10番に接続してあります。上記画像は 6B-Q5/EL84 の試験風景です。記憶はあいまいですが 正規アダプターの配線変更作業は端子台接続とは異なりバナナプラグの抜き差しで配線変更していたとの記憶です。ブラウン管アダプターは白黒テレビ用であったと思います。

まとめ

真空管試験機は市場にはほとんど出回っておらず 米軍の真空管試験機も同様に製造後半世紀ほど経過しており 校正作業をするにどこまで初期性能が出ているか ? は疑問点でもあります。その意味もありこの真空管試験機は現在目安程度の使用方法です。この試験機で選別した 2A3 p-p トランスドライブアンプを工作したときに思うような測定結果が得られませんでした。試験機の測定データーからペアチューブを選別したのですが 使った 2A3 は機器抜き取り管を多数真空管販売業者から購入したのですが 特性がそろっておらず悩みました。その意味もあり次項目で説明している真空管試験装置を工作したわけです。実際に音出しの動作を確認しますので 真空管個別の特性が判明します。多少とも過去の遺物である真空管いじりの参考となれば幸いです。

無銭庵 仙人 の独り言

この項目は本体に添付されていた DELICA 1001型のデーター表の記載です。海外からの要望もありデーター表全項目記載します。製造後50年以上経過している紙ベースの資料であり見苦しいとは思いますがご勘弁ください。30ページほどの掲載です。







以下真空管種別DATA



































上図のDATAが真空管試験機 1001型に添付されていた紙ベースの資料全数です。あまり参考になるとは思いませんが要望により掲載しました。




by musenan sennin (無銭庵 仙人)


1 件のコメント:

  1. 真空管テスターのデータとこのプレゼンテーション投稿をありがとうございました。
    ノルウェー/ギリシャからよろしくお願いします。

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