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古典管である 2A3 A級 シングルステレオアンプなどは いまだに真空管アンプとして工作される方も多数見受けられます。そのような愛好家に失敗事例を含め回路構成を順次進めます。初心者からいきなり 300B のアンプを組み立てる方もいるようです。小生もラジオ少年時代は立体配線図などを参考に多数工作してきました。現在では骨董品測定機器も収集した結果 ある程度回路解析はできるようになりましたので 専門的な記述が出てくるかもしれませんがご了承願います。
まずは例として ST管 2A3 シングル増幅器から話しを進めます。2A3 の真空管の規格から事始めとします。
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| RCA 2A3, TEN 2A3, GE 2A3, |
三極管構造であり電極として プレート P (陽極), グリッド G (格子), フィラメント F (陰極 繊条), 又は カソード K (陰極) の3つの電極がある真空管です。初心者においてはこのような直熱管はヒーターハムが出やすく 又 シングル動作の場合 B電源からのハム音が発生することが多々あります。手始めとして カソード仕様でカソードを熱するためのヒーターと分離している傍熱管の真空管から工作されることをお勧めします。2A3 と同等管としてヨーロッパ生まれの R120 という真空管が存在します。 R120 シングル増幅器として工作はしましたが フィラメント構造ではなく傍熱管ですが純粋の三極管ではありません。四極管の三極管接続の真空管です。
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| フランス製 DARIO R120 2A3 同等管 |
2A3 シングルステレオアンプは複数台工作してきましたが 夜間のリスニングにおいて 残留雑音に悩まされ その都度解体してしまいました。残留ハム等スピーカー端子で 1.0mV 以上ある場合 使っているスピーカーにもよりますが 能率の良いスピーカー(90dB/m以上)であれば使い物になりません。そのため常時使っている三極管・三極管接続の複数台アンプの残留雑音レベルは 1.0mV 以下であり スピーカーの直近まで耳を近づけなければ検知できないほどです。今日オーディオ分野で有名になっている古典管 2A3, 300B など直熱管シングルアンプは残留雑音退治に苦慮します。新規に 直熱管 シングルアンプを工作予定の方はこのような欠点もあるため 心して工作してください。
上図は真空管を2本使った電力増幅管 2A3 をドライブする増幅器です。2A3 は古典管でありグリッドに信号を入力するのですが グリッドに入力する電圧が近代管 6B-Q5 のように小さな信号では動作しません。2A3 のバイアス電圧を真空管規格表で見ますと プレート電圧 250V, グリッド電圧 -45V, 陰極電圧(フィラメント)をグランドレベルとした場合 プレート電流及び陰極電流は 60mA と記載されており 2.5KΩの負荷では約3.5Wの出力となります。そこでA級増幅の場合 陰極とグランド(アース)間に750Ωの抵抗を挿入した場合オームの法則により E = I × R により 60mA × 750Ω 45V と計算できます。ということはグランドレベルから見ればグリッド電圧が0Vとした場合 カソード(陰極)から見た場合グリッドは負電圧となります。これがカソードバイアスといわれる回路です。陰極はカソードではなくフィラメントですが話を進めるに フィラメントをカソードと表記します。よく記載されている事柄にプレートとカソード間の電圧が言われますがこの場合カソードから見た場合プレート電圧は 250V となっているはずです。グランド(接地)を基準に電圧を測定した場合 カソード電圧にプレートとカソード間の電圧を加算した電圧がプレートに加わる電圧で 295V です。プレートとカソード間の電圧を表したのが Ep-k です。プレート電圧は 295V ですがそこには出力トランス(OPT)の巻き線を通じ電源回路につながります。出力トランスの一次巻き線抵抗はトランスの種類により異なりますが 通常 5V~10V近く発生するため供給する電圧としては 300V~310Vほどの電圧が必要となります。となれば電源トランスから整流管又はシリコンダイオードを使って交流電圧を直流電圧に変換後フィルター回路で交流成分を平滑する回路が必要となり整流後の電圧は 320V~340V ほどの電源でなければなりません。
上図は今回説明する 2A3シングル増幅器のプリアンプからの信号によりスピーカーを鳴らすのですが その電力増幅管をドライブする真空管2本を使った回路です。あまり見かけることがないような回路です。SRPP シャントレギュレーテドプッシュプル(Shunt Regulated Push-Pull) 回路といわれます。三極管を直列に接続した回路であり 上側の三極管はカソードホロワと呼ばれ 入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低い回路で増幅度は1以下であり増幅はしません。別名インピーダンス変換回路と呼ばれます。下側の三極管で小さな信号を増幅します。カソードホロワと同じ働きをする回路は半導体でも同じような回路がありトランジスターではエミッターホロワ FETではソースホロワと呼ばれます。
実働時の各部の電圧・電流測定値
真空管試験装置からの供給電圧 B0 380V 供給電圧降下抵抗 8.6KΩ 供給電流 : 4.35mA B1 : 338V B2 : 210V B3 : 246V R1(k) : 129V R5(k) :108V R2(K) : 1.145V R6(K) : 3.78V V1 : 0.53mA V2 : 3.78mA
1000Hz/100mV 入力時 VRでV1グリッド入力電圧を 30mV に調整した場合の各部電圧 V2/R4 2.2V V2/C3 出力 25V この出力 25V とは 正弦波の実効値電圧であり正弦波のの最大値は 25V× 1.41=32.25V です。 尖頭値 山と谷との電圧は 32.25V×2=70.5V です。表記すれば 70.5V p-p (ピーク ツー ピーク)と呼びます。この信号が電力増幅真空管のグリッドに供給される電圧です。真空管規格表には入力される信号の大きさとして実効値表記か最大値表記では電圧表記に大きな電圧差があります。グリッドバイアス電圧が判明すれば 2A3 の場合 -45V ですので A級増幅の場合 45V 最大値 信号で最大出力となります。実効値電圧に換算すれば 約32V この電圧がグリッドに供給されれば最大出力となります。オシロスコープで観察した場合実効値 32V の波形を観測した場合 正弦波の山と谷の間の電圧(尖頭値電圧)を観測した場合 32V ×√2 ×2 = 90.5V p-p(peak to peak) の電圧波形が観測できます。規格表などの場合ドライブする正弦波の電圧が 実効値?・最大値?・peak to peak? 値を表しているのかを判別しなければなりません。
上図は真空管試験装置から US8P ソケットより試験装置からの B電源 +350V 程度・無負荷時には約380V及びヒーター電力 6.3V /2A が取り出せるので試験的にまな板配線に接続し データーを収集します。回路電流は YEW製精密級直流電流計で回路電流を監視します。電流計は 0.5級であり 横河MODEL 2011型です。測定レンジは 10mA/fs です。
使用している平板アルミ板は以前ICアンプ工作に実験用として使用していたものでジャンク品です。真空管と真空管の間に 12V と記載されたコネクターが2か所見受けられるのは試験において真空管のヒーター電圧及び電流が真空管品種により異なるためヒーター電圧切り替えコネクターです。回路電流測定器の前にあるのが 1000Hz 正弦波発振器で基板内のVRで試験に使う正弦波電圧をプリセットして観測します。正弦波発振器は 1000Hz±2Hz の精度があり歪率は 0.02%の低歪率CR発振器であり自己工作品です。
今回電力増幅管ドライブ管として各種双三極管を搭載して実験できる仕様としてあります。9MT管では市場に多く出回っているヒーター電圧が 12.6V管の 12A-X7, 12A-U7, 12A-T7, 12B-H7A, 5814A,などと 6.3V管 6A-Q8, 6D-J8, 6B-Q7A, 6F-Q7, 6C-G7, 及び4桁数字管で高信頼管・耐震管・長寿命管・通信管などの 4桁数字管 5751 等も使用できる構造です。
上図は各種カソード抵抗に100μF/25WV を並列接続した素子を数種類作成しました。テストする真空管の種類によりカソードバイアス抵抗の抵抗値が異なるため 560Ω~4.7KΩ まで準備をして回路を組み立てます。SRPP 回路では上側の真空管にはコンデンサーがつかない同じ抵抗値の抵抗器を準備します。実験の結果 820Ω~3.3KΩまでE12系列の抵抗器があれば事は足ります。
抵抗器および電解コンデンサー類の上部にあるのが ±12V電源で精密な1000Hzおよび低歪率の正弦波を発振するウイーンブリッジ発振器です。
上図の終段管ドライブ回路は初段は 12A-X7, ドライブ段は 5814A(12A-U7同等管), を使いました。両方とも双三極管であり SRPP 回路として三極管を直列に接続した構造です。ただここで注意することがあります。それはヒーター・カソード間の絶縁破壊の恐れがあります。通常の真空管の場合耐圧は 100V 以下でありカソード電圧が上側の真空管であれば 100V を超えてしまいヒーター・カソード間の絶縁不良が発生することから 通常ヒーター回路の 6.3V に 直流50V~80V 程度のヒーターバイアス回路を設けることにより 上側・下側ともカソード・ヒーター間の電圧が100V以下となり絶縁破壊は発生しません。
なぜこのような真空管の配置になったかを考えます。
12A-X7 真空管規格表から High-Mu Twin Triode
ヒーター電圧・電流 12.6V/0.15A, 6.3V/0.3A
真空管特性 最大プレート電圧・損失 330V, /1.2W, Rp-80000Ω, Gm-1250, μ-100, Bias-1.0V
12A-U7 真空管規格表から Medium-Mu Twin Triode
ヒーター電圧・電流 12.6V/0.15A, 6.3V/0.3A
真空管特性 最大プレート電圧・損失 330V, /2.75W, Rp-7700Ω, Gm-2200,μ-17, Bias-8.5V
6A-Q8 真空管規格表から Twin Triode
ヒーター電圧・電流 6.3V/0.435A
真空管特性 最大プレート電圧・損失 300V, /2.5W, Rp-9700Ω, Gm-5900,μ-57, Bias-2.3V
6B-Q7A 真空管規格表から High-Frequency Twin Triode
ヒーター電圧・電流 6.3V/0.4A
真空管特性 最大プレート電圧・損失 250V, /2.0W, Rp-5800Ω, Gm-6000,μ-35, Bias-1.98V(Rk:220Ω,Ip:9mA,Ep:150V)
上記が真空管規格表からの抜粋事項です。
上記は V1 6267 V2 6B-Q7A を搭載したときの出力波形をオシロスコープで観察しました。オシロスコープは20Mz,2現象オシロスコープです。Ch-1 だけの動作で入力カップリングは DC ですのでグランドレベルは画像の一番下水平ラインです。測定モードは 10:1プローブ使用 測定レンジ垂直感度 5V/DIV 水平走査時間 0.5m,sec/DIV に設定してあります。垂直は DCカップリングですので一升目(DIV)は 50V になります。測定箇所は V2 のプレートに接続。ミリバルで 30V/rms の信号を観察しています。この観測結果から波形の中心点電圧は 約240V です。大まかですが観測波形では谷の電圧は 170V 山の電圧は 250V と読めます。山と谷の間を読み取れた電圧は約80Vp-p です。30V の実効値である正弦波では最大値は 42.4V peak to peak 値は 84.8V ですので観測した波形の電圧とは多少の誤差はあります。波形の山と山間 1サイクルでの升目は2升です。1升は0.5m/sec から時間軸では1m/sec であり周波数を求めると 1000Hz です。測定した時の各電極の電圧 V1 6267 Ep:89.4V Ek:1.763V Ik:1.469mA V2 Ep.1:240V Ep.2:217V Eg:89.1V Ek:96.4V Ik:1.469mA Ep-k.1:148V Ep-k.2:125V 信号がない時のプレート電圧は 240V です。240Vを基準に正弦波は上下に最大値の電圧が出力されます。オシロスコープから読み取れた数字とは多少誤差が発生しましたがほぼ同じでといえます。
上記がオシロスコープによる観測波形です。2A3 をドライブする電圧は 約32V/rms でした。今回実験の結果 6B-Q7A 搭載がNFB を施していないにもかかわらず 他の真空管と比べ 裸特性で一番歪が少なかった真空管です。6B-Q7A はあまりオーディオで使われていません。しかしこのような駄球であっても特性は良好でした。
12A-X7 は μ100 で増幅率が大きいことを表します。その反面プレート抵抗が 80KΩ で電流が流れにくいと判断できます。これらから増幅率が大きいが出力インピーダンスが高く負荷動作点を考察すると抵抗値も大きくしなければならないことです。増幅度が高く利得として 40~50dB 以上の利得が得ることも可能です。
12A-U7 は μ17 で増幅率が小さいことを表します。その反面プレート抵抗が 7700Ω で電流が流れやすいと判断できます。ということはプレート負荷抵抗を低く設定でき 次段の負荷抵抗が比較的低くても信号の減衰も少なく パワードライブが可能というわけです。増幅度は大きくなく利得として 20dB 程度です。
6A-Q8 は μ58 で増幅率が中間であることを表します。プレート抵抗が 9700Ω で 12A-X7より電流が流れやすいと判断できます。ということはプレート負荷抵抗を低く設定でき 次段の負荷抵抗が比較的低くても信号の減衰も少なく 多少パワードライブが可能というわけです。増幅度は極端に大きくなく利得として 30dB 程度です。
設計方針として初段は高利得の増幅回路としNFB回路についても考慮します。NFB回路により裸利得からNFBでの全体利得減少についても考慮しなければなりません。上側の真空管でカソードホロワですから通常よりも出力インピーダンスを下げることができます。ドライブ段は増幅度はあまり大きくなく ドライブインピーダンスが低く設定でき 電力増幅管のグリッド抵抗が100KΩ以下の場合でも十分なドライブ可能とするためです。
この回路であれば直熱三極管の王様 WE-300B A級シングル動作時のバイアス電圧は真空管規格表から -74V ですのでグリッドに供給する実効値電圧は最低約 53V と判明します。このように古典管である直熱三極管はバイアス電圧が大きくドライブする前段の設計には苦慮します。
古いスクラップブックに保管してあった当時の組み立てキットのカタログからの抜粋です。
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| KENオーディオ KM-100 アンプキット |
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| KENオーディオ KM-200 アンプキット |
上図は組み立てキットとして販売されていた 2A3-s, VT-52-s(45類似) 当時のカタログに掲載されていた配線図です。販売会社は KENオーディオ です。当時小生は LUXKIT の組み立てキットを50年ほど前に複数台購入し(A3400,A3300,A33,KMQ60) その機器は現在でもメインテナンスをしながら実働します。
三極管 A級シングルアンプであれば大きな出力は望めません。2A3 A級シングルアンプであれば 3.5W 程度です。五極管・ビーム四極管であれば A級シングルアンプであれば3~5Wのアンプは簡単に工作できます。音質は個人差もありますが三極管のほうが良い音が出ると一般的には言われます。特に古典管の三極管はリニアリティー(直線性)が良くNFBなしでも良好な音質が得られ無帰還アンプを好まれるオーディオマニアの方もおられます。戦前の名球と呼ばれるのは直熱三極管 UX-45 と思います。
6B-Q5(EL84) 五極管接続 ヒーター電圧/電流 6.3V/0.76A 最大プレート電圧/損失 300V/12W 最大スクリーングリッド電圧/損失 300V/4W A級シングル動作の場合 プレート電圧 250V スクリーングリッド電圧 250V 第一グリッド電圧 -7.3V カソード抵抗 135Ω 負荷抵抗 5200Ω 第一グリッド入力信号 4.8V/rms(13.7Vp-p) 出力 6.0W
ところがこの 6B-Q5 を三極管接続とすると プレート電圧 250V カソード抵抗 270Ω ドライブ電圧 6.7V/rms 負荷抵抗 3.5KΩ 出力 1.9W バイアス電圧 -9.18V
五極管接続のB級増幅器では最大出力は17Wですが 三極管接続AB1級プッシュプルでは 5.2W しか出力は得られません。
お遊びでプッシュプル回路のドライブ回路をまな板状のアルミ板に組み立て実験しました。
上図はLUXのアンプによく使われるリークムラード型位相反転ドライブ回路です。一般的にプッシュプルの位相反転ドライブ回路には様々の回路が存在しますが アルテック型(PK分割型)およびリークムラード型が数多く用いられているのではないでしょうか。
上図は dynaco MARKⅢ の回路図です。以前所有していましたが悪友のオーディオ仲間に譲り現在所有していません。悪友はすでに西国に旅立ちアンプの存在は確認できません。初段管は複合管 6AN8 五極管と三極管が一本の真空管に封入されています。終段管は TANGSOL 6550 (KT88互換)がUL接続で動作します。最大出力が 60W であり真空管アンプとしては大出力になると思います。特徴として初段管は五極管で多くの利得を稼ぎ 次段の位相反転回路は PK分割型 です。この位相反転回路では増幅度・利得は稼げません。五極管部での利得で動作する回路です。PK分割型位相反転回路と初段増幅回路は直結です。このような回路構成をアルテック型とも呼ばれます。6AN8 の真空管規格表によるとP-K分割ユニットの三極管部の特性は
最大プレート電圧・損失 330V/2.8W プレート電圧150V時 バイアス 3.0V プレート電流 15mA Rp 4700Ω Gm 8000 μ 21 と記載されており 12A-U7 方ユニットとほぼ同等であることが判明しました。
6550真空管の規格表によれば ウルトラリニア接続プッシュプル増幅によると
AB1級 プレート電圧 450V 第一グリッド電圧 -48V 負荷抵抗 4KΩ ドライブ電圧G-G間 96Vp-p値 最大出力時のプレート電流 265mA(2管分) 出力 70W THD 2.4% 規格表ではアイドリング電流値は2管で150mA と記載
真空管1本当たりグリッド入力電圧は 34V/rms の信号と計算できます。G-G間の電圧では68V/rms と判明します。規格表の 96Vp-p を√2で割ればほぼ 68V/rms ですね。この機種は固定バイアスで動作しており出力管のカソードにはアイドリング電流測定の抵抗 11.2Ωが取り付けられており 当時正確な測定器がない場合でも校正作業として 1.5Vの新品乾電池の起電力が 1.55V として扱われ この時の表示と同じとなるように測定器を校正します。条件として終段管は特性のそろったペアチューブの真空管であることが建前です。11.2Ωの両端が 1.55V であればアイドリング電流調整は完了です。オームの法則で電流を計算すると 0.139Aですので真空管1本あたり約70mAに調整できていることになります。今日この機種を調整する場合 特性のそろった出力管は入手に困惑すると思います。DCバランス調整回路に変更するのが最良ではないかと思います。
上図はお遊びで組み立てたリークムラード型位相反転回路です。初段管は 6267(EF86)の三極管接続です。6267の三極管接続での動作チャートを調べました。
プレート供給電圧 250V とした場合 プレート負荷抵抗 100KΩ カソード抵抗 2KΩ カソード電流 1.33mA 増幅度A 29 と記載された表が見つかりました。ほぼ 6A-Q8 に似通った特性と思います。五極管接続では増幅度Aは 167 と記載されており高利得増幅回路となります。特にこの真空管はローノイズ仕様で作られており真空管内部はシールドケース内に五極管部が取り付けられており 目視できる電極はシールドケース部です。
V2は差動増幅器構造で共通のカソードで信号はつながっています。V2の上側はグリッド入力・プレート出力となるため位相は反転します。V2の下側はグリッドには1MΩのバイアス抵抗が上側のグリッドと接続されており交流的にはグリッドは 0.47μF で接地されています。信号はカソード入力・プレート出力であり位相反転はありません。同相出力です。
ここで位相反転段での抵抗器の数値です。大まかにはプレート抵抗器の抵抗値の半分がカソード抵抗値となります。上図ではそのような配分になっていると思います。次にグリッド電圧を考察すると初段から直結でつながっていますので 差動回路のプレート抵抗を通じてプレート電圧となりますが 考え方としてプレート抵抗での電圧1/3 カソード抵抗に発生する電圧1/3 真空管のP-K電圧1/3 となるように供給電圧の1/3となるように配分します。例えると電源電圧300Vとした場合プレート抵抗で100V発生した場合上図の抵抗値39KΩでは抵抗を流れる電流は 2.56mA カソードは2管分の電流が流れるので 2.56mA×2=5.12mA ですね。電圧を計算すると 0.00512×20000Ω = 102.4V 約100Vです。各抵抗に100Vが発生し真空管 Ep-k 100V となります。そのため差動アンプ部の供給電圧の1/3となるように初段管のプレート電圧を調整しなければなりません。その調整する抵抗は R8,R10, で調整します。この回路では使われる双三極管の種類により電圧・電流は大きく変化しません。しかしその真空管の μ により出力される電圧は変化します。差動増幅回路のプレート負荷抵抗により電流は変化します。R5,R6, の抵抗値が低くなった場合次段への出力インピーダンスは低くなります。
V2の真空管を種類を変えて実験してみました。まずは LUX のアンプによく使われている位相反転段によく使われている 6A-Q8 で動作試験します。この 6A-Q8 は高周波増幅回路用途として開発されたと思います。同じ用途として昔から高周波増幅管ですがオーディオでも見かける真空管です。12A-T7,6D-J8,6B-Q7A,などと思います。VHF帯のチューナーに使われていました。LUXMAM SQ-38FD にも 6A-Q8 が位相反転段に使われていますがシャーシーには 6D-T8/6A-Q8 と刻印されています。現物の 6D-T8 は見たことはありません。真空管規格表で確認すると High-Mu Triode μ60 であり6A-Q8 と似通った特性です。同様に 12A-T7 とも似通っていました。
V2:6A-Q8
B1:319V B2:253V I0:6.5mA 入力信号 1000Hz/100mV 30mVに減衰して入力信号
V1 6267 三極管接続 B2:253V RL:120KΩ Ep:93V Ek:1.72V Rk:1.2KΩ Ik:1.4mA
V2 6A-Q8 B1:319V RL:39KΩ P1:222V P2:229V Ek:99V Rk:20KΩ Ik:4.95mA
入出力電圧/rms IN:30mV 6267(P):920mV RL1:14V THD:0.3% RL2:13.4V THD:0.6%
V2:6189W(12A-U7)
B1:319V B2:253V I0:6.5mA 入力信号 1000Hz/100mV 30mVに減衰して入力信号
V1 6267 三極管接続 B2:253V RL:120KΩ Ep:90.9V Ek:1.72V Rk:1.2KΩ Ik:1.4mA
V2 6189W B1:319V RL:39KΩ P1:224V P2:219V Ek:100.5V Rk:20KΩ Ik:5.06mA
入出力電圧/rms IN:30mV 6267(P):920mV RL1:16V THD:0.06% RL2:13.8V THD:0.05%
V2:6B-Q7A
B1:319V B2:253V I0:6.5mA 入力信号 1000Hz/100mV 30mVに減衰して入力信号
V1 6267 三極管接続 B2:253V RL:120KΩ Ep:91.2V Ek:1.73V Rk:1.2KΩ Ik:1.44mA
V2 6B-Q7A B1:318V RL:39KΩ P1:224V P2:228V Ek:99V Rk:20KΩ Ik:4.95mA
入出力電圧/rms IN:30mV 6267(P):920mV RL1:12.0V THD:015% RL2:11.2V THD:0.2%
上記の測定結果が得られました。ほぼ誤差内に入っていると思います。ただ出力される波形の歪率が違っており裸特性の歪率であり 電力増幅管とOPTを通過後NFBをかけていませんので目安かもしれません。この状態で入力電圧を100mV とした場合約30V/rms 近くの出力波形となります。ほとんどの真空管がドライブできると思います。入力を上げていけば 50V/rms 程度までは波形観測できますが 歪も増加していきます。
リークムラード型位相反転回路の動作特性を調べてみました。アルテック型のPK分割型と異なり位相反転段での利得が 20dB ほどあるので 初段の利得が少なくてもことは足ります。ただこの回路にも欠点があり V2 からの出力電圧のバランスが若干悪く ACバランス調整のため V2 の片側のみ負荷抵抗を数パーセント増量することにより改善できます。増量する側はグリッドに 0.47μF が接地されている側のプレート負荷抵抗を若干大きくします。
上図は今回各部電圧を測定した安価なデジタルポケットテスターです。パッチもんを販売している店舗で税込み1000円以下で購入できるテスターです。YEW精密級 0.5級の電圧・電流計で自己校正しましたが 数パーセント以下の誤差であり十分実用になるテスターと思います。近年主流のデジタルテスターも所有していますが高電圧の測定はできません。DC:320V以上となるとエラーとなり真空管アンプ点検には使用できません。もしも使用しているテスターが壊れた場合 修理代金より安価なこのようなテスターを購入されてはいかがでしょうか。
上図はジャンク品のアルミ板に組み立てたリークムラード型位相反転回路です。このドライブ回路を使って 純粋の三極管 テレビの垂直偏向回路の出力管として製造された真空を使ったプッシュプルで動作するアンプをバラック配線で工作しました。使用した真空管 6S4Aです。
真空管規格表を調べると
Medium-Mu Triode 9AC 6.3V/0.6A 最大プレート電圧・損失 550V/8.5W Vertical Amplifier Ep 250V bias -8.0V Ip24mA Rp 3700Ω Gm 4500 μ 16.5
上記の規格表によりバイアス電圧が -8V の時プレート電流が24mA から A級増幅時のカソード抵抗は 333Ω と計算できます。その時の負荷抵抗はプレート抵抗の3~4倍の値ですので10Kから12KΩの出力トランスを準備しなければなりません。
今回はA級シングルアンプではなく AB1級プッシュプル回路で遊びます。
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上図はテレビの垂直偏向出力管 6S4A をプッシュプル増幅器としてお遊びで工作したバラック配線の実験風景です。6S4A は国内のテレビには採用されていません。国内のテレビでは 9R-AL1,12B-H7A ,16A8,などか採用されていました。真空管の規格表から考察すると小出力のアンプになります。今まで説明してきましたがドライブ回路は リークムラード型位相反転回路で設計しました。V1 6D-J8 V2 6B-Q7A を搭載した回路です。V1,V2,の真空管はともにテレビなどのVHF帯高周波増幅回路に多用された真空管です。V3,V4, 6S4A となります。出力トランスは 新タンゴ FE10-10 を接続しました。プッシュプル出力トランスで 一次巻き線 P-P 間のインピーダンスは10KΩでトランス容量は 10W 型の小型出力トランスです。
上図はアルミ板に配線した回路です。アルミ板の旧使用元は HP2現象オシロスコープの高電圧発生器シールドケースの上蓋の加工品でした。黄色の足はコンクリートに穴をあけ ねじを取り付けるためのPYプラグです。
真空管試験装置より B 電源 B1:319V 及びヒーター加熱用電源 AC:6.3V を供給します。今回採用した真空管は V1:6D-J8, V2:6B-Q7A, V3,V4:6S4A, です。
B1:319V 2.7KΩ B2 :302V 20K B3:267V I0:47mA
V1 6D-J8 B3, RL:120K Ep:94V Ek:3.14V Rk:2200+100 Ik:1.35mA
V2 6B-Q7A B2, RL.1:37K Ep.1:201V RL.2:37K Ep.2:203V Rk:20K Ek:100V Ik:5.0mA
V3,V4 6S4A B1, RL:OPT,10Kp-p Ep1:316V Ep2:314V Rk:270 Ek:11.68V Ik:43.2mA
上記測定結果です。V3,V4 を配線変更すれば 6B-Q5 三極管接続アンプの動作試験もできます。6B-Q5p-p の場合最大出力は5W強のアンプに仕上がります。
次の項目は仕上がったアンプの測定器を使った特性調査です。最大出力2W のアンプではないかと思います。一応 ALL 三極管アンプですが ?
測定器を使って大まかな特性調査してみました。思惑通り最大出力は THD 3% とした場合 16Ω 負荷で測定すると 6.8V/rms を測定しました。V1 のカソードに NFB 入力端子があり アウトプットトランス2次巻き線 16Ω 端子から抵抗を接続して NFB をかけます。今回 15KΩ,と22KΩを準備しました。NFB 量を計測すると 裸特性から 15KΩでは -8dB, 22KΩでは -6dB, を観測しました。三極管アンプですので強度の NFB は必要ありません。残留雑音についても測定しましたが スピーカーに耳を近づけても感知できないレベルでした。測定値 1.5mV A補正なし A補正時では1mV を切ると思います。投稿者も年を積み重ねています。若い時とは異なり耳の劣化もあります。記述内容については参考程度とご理解ください。
上図は補助ヒータートランスです。真空管試験装置から外部に供給するヒーター電流には制限があります。ヒーター電力が大きい場合容量不足となるため 補完用として外付けできるヒータートランスです。左側 6.3V/5A 右側 2.5V/2.5A × 2 直列接続時 5.0V/2.5A 容量のヒータートランスです。
まとめ
くだらないお遊びでの工作および測定でした。純三極管であるがあまり工作例の少ないアンプを作ってみました。やはり3W弱のアンプでは実用となるでしょうか。能率の良いスピーカーシステム 90dB/m 以上あれば十分に実用となります。通常 BGM 程度のリスニングであればアンプの出力は 1W 未満で稼働していると思います。常用システムではいまだに3Wほどのアンプで聞くことは多々あります。単管ステレオ・シングル増幅アンプで WE-421A を使ったものです。そのほかのアンプはプッシュプル増幅であり家庭内でのリスニングでは KMQ-60 のような30W出力クラスのアンプは必要ありません。5W~15Wもあれば満足できます。
入門者用対象の真空管アンプキットとして 6B-M8 シングルステレオアンプも存在します。五極管接続であり 出力は片チャンネル 3.5W です。2A3 シングルと同じ出力が得られます。好きな音楽を聴き比べればアンプの種類により音色が異なることが判明すると思います。又半導体アンプなどとも聞き比べれば音質が異なると思います。各自好みにより 心地よい音質とは ? の感覚ですが 古典デバイスである真空管でも 三極管は心地よい音楽を奏でるデバイスと思います。終戦後のST管5球スーパーラジオの電蓄では電力出力管は UZ-42 です。五極管接続では最大出力 4.8W もありました。その後の19インチ・コンソール型カラーテレビでの 音声出力管は五極管接続 6A-Q5系,6B-M8(16A8,8B8)系で出力は3~4.5W前後です。三菱電機製ではNHKのモニタースピーカーで有名なシングルコーン P-610系 を搭載したテレビも存在します。
電力増幅管規格表よりバイアス電圧が判明すれば大まかにはドライブ電圧が判明します。2A3 の場合 -45V ですので 45V から√2(1.41)で割ればドライブに必要な実効値電圧約 32V/rms が判明します。Ep-k 250V 出力は 3.5W です。同様に 6B-Q5 の場合であれば三極管接続の項目から A級シングル場合 カソード電流 34mA カソード抵抗 270Ω よりバイアス電圧を求めると E=IR から計算すると約9.2V です。入力電圧は約6.5V/rms です。規格表にはドライブ電圧として6.7Vの実効値電圧と表示してあります。Ep-k 250V 出力は 1.95W です。2A3 の場合ドライブ電圧が 32V/rms 必要ですが6B-Q5 の場合 6.5V/rms ですのでドライブ電圧に大きな差があります。6B-Q5 は近代管であり感度が高いといえます。このように古典管の三極管はドライブ電圧が相対的に高いためドライブ回路設計に注意が必要です。6C-A7 三極管接続 A級シングルでは カソード抵抗 370Ω カソード電流 70mA からバイアス電圧は 25.9V から ドライブ実効値電圧では 18.3V/rms です。Ep-k 350V 出力は 6W 得られます。2A3 と比べればドライブ電圧は低い電圧であると判明します。有名な WE-300B ですとバイアス電圧は -74V です。実効値では約53V/rms のドライブ電圧が必要となります。WEの規格表ではドライブ電圧は最大値74V と記載されています。Ep-k 350V 出力は 7W です。当時はトランス結合で昇圧した回路が定番でした。CR結合の場合 53V/rms の波形ではオシロスコープで観測すれば 約150Vp-p の波形を扱います。となればドライブ段での供給電圧も必然的に高くしなければ得られません。ドライブ段は負荷抵抗を小さくし 真空管に流れる電流も増やし なおかつ負荷抵抗での発生する電圧を高くしなければなりません。高電圧パワードライブ回路の設計となります。しかも歪なくです。
別室では Luxman SQ-38FD が現役で動きます。スビカーは ALTEC 612J MONITER ユニットは 同軸38 604-8K が搭載されています。一般家庭でのリスニングにはやはり音量を上げなければ納得した音質とはなりません。その意味もあり道楽部屋では数Wの出力があれば満足できます。その理由は能率の良いシングルコーンスピーカーを使っているからです。特に夜間小音量では大型スピーカーと比べると音質は全く異なります。小音量では大型スピーカーでもトランジスターラジオのような音しか出せない機種もあります。近年6半クラスの能率の良いスピーカーユニットは見つけ出すのが困難となっています。
音楽を鑑賞するに各個人での感覚は異なると思います。自己信念をもってこの道楽を楽しましょう。
無銭庵 仙人の独り言
2A3シングルステレオアンプは複数台工作し 気に食わずその都度解体してしまいました。冒頭で SRPP 電力増幅管ドライブ回路解説しましたが 同じ回路形式を 真空管試験装置及び今からご披露する 2A3 シングルステレオ ロフチン・ホワイトアンプです。ロフチン・ホワイトアンプとは半導体回路のように真空管と真空管を直接接続する回路です。別名七面鳥アンプとも呼ばれていました。古典管では真空管と真空管の接続方法として数多くトランス結合が古くから採用されており Hi-Fi とは言えない周波数帯域の狭いアンプです。古典管 50 など この回路方式があったのですが 工作された方は数少ないと思います。しかし大飯食らいのアンプです。古典的なロフチン・ホワイトアンプ回路で設計した場合 利得不足となり常用使用しているプリアンプ(A3400)とは相性が悪いため ゲイン不足を補うため前置増幅段を設けています。
上図は完成した 2A3 A級シングルステレオ ロフチン・ホワイトアンプ で 電力増幅管とドライブ管との電極は直結されている 高々方チャンネル3.5W程度でありながら 発熱の多い効率の悪い真空管式ステレオアンプです。真空管と真空管を直結するため 小細工箇所が多々あります。使用している真空管は国産マツダ製です。現在の会社名は東芝です。RCA 2A3 も複数本所有していますが RCA と東芝では真空管の構造は異なります。RCA 製は整流管 UX-80 とよく似たフィラメント構造でありマイカシートで折り返しています。東芝製はコイルスプリングで釣り竿のような形式でフィラメントを保持しています。RCA 製は帯状フィラメントでありで東芝製は糸状フィラメント構造です。
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| 左 マツダ 2A3, 右 RCA 2A3, フィラメント構造の違い |
注釈 記述上 2A3 は直熱管ですのでカソードは無くフィラメントですが記述上カソードと表記します。
再度 2A3 真空管規格表の話です。 A級シングル動作の規格を確認です。
Ep-k:250V Eg:-45V Ip:60mA RL:2500Ω OUTPUT:3.5W THD 5%
真空管はドライブ管と電力増幅管が直流的に接続されているのが ロフチン・ホワイトアンプ の特徴です。ということはドライブ段の出力端子が 2A3 のグリッドに直結されるわけです。ドライブ管からは 2A3 のグリッドには 約32V/rms(実効値)の信号が入力されます。無信号時 アイドリング状態時 2A3 各電極電圧を調べると ドライブ管出力側の電圧を100Vと仮定した場合で考察します。グリッド電圧が100Vであるのでカソード電圧は 100V+バイアス電圧 45V = 145V これがカソード電圧になります。プレート電圧を求めると Ep-k 250V から 145V + 250V = 395v となります。プレートにはアウトプットトランスが接続しますのでトランスの一次巻き線抵抗により 5V~10V 程度電圧降下が発生するため B1 供給電圧は 400V~405V 程度供給しなければなりません。次にカソード電圧からカソード抵抗を求めます。カソード電圧は 145V でした。プレート電流=カソード電流よりカソード電流は 60mA からカソード抵抗を求めると オームの法則より R=E/I R=145V/0.06A =2416Ω と計算できます。ここでカソード抵抗を選択するのですが許容電力を調べなければなりません。W=I・E から W=0.06A×125V =7.5W です。消費する電力から3倍以上の許容電力値の抵抗を選択します。20W程度の抵抗器が必要となります。市販されている抵抗値では 2KΩ/20W型 が入手できると思います。残りの 416Ω はセメント抵抗・酸化金属皮膜抵抗などで微調整します。
上記アイドリング状態の各電極・電圧及び電流が判明しました。これをもとに組み立てます。最初の SRPP ドライブ回路を再確認してください。なぜ出力端子の電圧が100Vと設計したのでしょうか ? ロフチン・ホワイトアンプには好都合なドライブ回路であったからです。
上図は再調整前の 2A3 シングルステレオ ロフチン・ホワイトアンプ本体内部画像です。今回真空管規格表に記載されている数値となるように細かく調整していきます。
電源回路について
使用した電源トランスはノグチトランス PMC 170HG 350-320-290-0-70-290-320-350,V/DC:170mA 6.3-2.5-0,V/3A ×2 6.3-5-0,V/3A 5-0,V/3A の電源トランスです。チョークコイルは品番が確認取れませんが 10~15H/200mA 同じくノグチトランス製です。2A3 の直流点火は電圧が 2.5V 電流が 2.5A であるため思うように直流化ができず断念しました。300Bなどでは 5V/1.2A ですので比較的簡単に 6.3V 巻き線から整流後フィルター回路で直流化は簡単と思います。その意味から従来通り AC:2.5V 交流で点火します。フィラメント並列に50Ωの巻き線型ハムバランサー(VR)での対応としました。ロフチン・ホワイトアンプは別名七面鳥アンプともいわれ 各真空管のウオームアップタイムが異なり直熱管は短時間でヒートアップするためこのような直結アンプで異常電流が流れます。そのため電源回路の整流管は傍熱型の 5A-R4(Max 250mA) をわざと使っています。傍熱型両波整流管として他には 5V4-GA(Max 175mA), 5V4-G(Max 175mA), 5Y3-GTB(6087)(Max 125mA),5C-G4,6X4(Max 90mA),6C-A4(Max-150mA), などがあります。ただ整流管種により出力される電圧は異なります。この中で一番整流効率の良い真空管は 5A-R4 です。古典管になるほど整流効率が悪く取り出せる電圧も低くなりがちです。シリコンダイオードで整流した場合 整流器での電圧降下は少なく出力される電圧は高くなります。シリコンダイオード,5R4-GY(max 250mA), 5U4-G(225mA) などの直熱管とシリコンダイオードですと通電後すぐに整流動作となるため無負荷状態となり 高電圧が出力されます。遅延時間をとるため数十秒の遅延リレーを組み込む場合もあります。電解コンデンサーの耐圧についても考慮しなければなりません。その意味もあり整流管もほかの真空管と同じように動作遅延時間を合わせることが望ましいわけです。古典管の整流管も使う可能性があり整流直後の電解コンデンサー容量は最大 20μF/500WV 以下としなければなりません。今回使用したコンデンサーは無極性のメタルラィズド・ぺーパーコンデンサー 8μF/AC:500WV を採用してあります。直流換算すれば1KV耐圧以上と思います。その後チョークコイル通過後大容量の電解コンデンサー(500μF/660V)で極力リップルを防ぐ構造です。1000μF/330WV の電解コンデンサーを直列接続とし 分圧において電圧配分が同じとなるようにブリーダー抵抗(390KΩ/2W)をコンデンサーと並列に挿入してあります。このようなシングル増幅アンプは電源のリップル成分が顕著に出力として現れるためこのような設計となりました。350V巻き線を使用しますので無負荷時は最大500Vほどの電圧が出力されます。残留雑音 特にヒーターハム・電源からのリップルは極力低減しなければなりません。シングル増幅回路はプッシュプル回路に比較して打消し作用が期待できません。交流電源トランスからの誘導雑音・整流後のリップル雑音が多くなる傾向です。そのためにもチョーク・コイルインダクタンスを極力大きくすることです。それとB1に接続するフィルターコンデンサー容量も大きくすればよいわけです。整流管を使った場合 整流直後は大容量のコンデンサーは整流管を痛めるため使用できません。古典管の直熱型整流管では10μF以下とすること ! と明記された文献もありました。1000μ/330WV 直列接続はやりすぎました。インバター制御用途の高電圧電解コンデンサー大容量品が入手が簡単になったからです。記憶では50年前には存在していません。高々 100μF/500WV のコンデンサーが入手できる大容量品でした。倍電圧整流用200μFも存在しましたが耐圧は300V止まりです。
上記は ロフチン・ホワイトアンプ においての注意事項です。通常のアンプでは整流管・電力出力管とも直熱型でも問題は発生しません。なぜなら A級増幅回路であればカソードバイアス回路がほとんどであり カソードバイアス抵抗により通電後でも適正バイアスが得られるため異常電流は流れません。
上図は各真空管に配分するB電源電圧調整用の抵抗とフィルターコンデンサーです。整流管整流直後を B0, と表記します。その後チョークコイル通過後を B1, ドライブ管電源を B2, 初段管電源を B3, とします。
このアンプでは各部の電圧配分を考慮して設計しなければなりません。A級増幅ですので消費電流変化は大きくありません。60mA × 2 120mAを流した時の B1 の電圧が何Vになるか? が最初に決めなければなりません。とりあえず350V巻き線整流後フィルター回路での電圧降下分を見越して 2A3 のプレート電圧を 410V と仮定して設計します。真空管のEp-k 電圧 250V ですので 410v-250v=160V この 160V がカソード電圧です。
カソード電圧が判明すればグリッド電圧及びカソード抵抗値が判明します。グリッドバイアスは -45V です。160V-45V=115V この 115V がグリッド電圧ですので ドライブ段の電圧と同じでなければなりません。そこで思い出してください。このブログ最初に説明した SRPP 回路のドライブ段の電圧が100V前後となっていましたが カップリングコンデンサーで次段に送り出していました。今回はカップリングコンデンサーは使いません。 2A3 のグリッドと直結です。次にカソード抵抗を計算します。カソード電圧 160V 電流 60mA からオームの法則で R =160V/0.06A = 2666Ω が導き出されました。今は机上の計算値です。これから実物で微調整をしていきます。
上図は 2A3 のカソード抵抗・ハムバランサーVR 50Ωです。主となるカソード抵抗は 2KΩ/20W 巻き線ホーロー抵抗と微調整用 酸化金属皮膜抵抗です。又カソード電流測定用精密金属皮膜抵抗10Ω/0.5W型 /1%誤差品を直列に接続し電流値を電圧換算します。
この 2A3 シングルステレオ ロフチン・ホワイトアンプ は10年ほど前に組み立てて 隠れ山小屋で使用・保管していました。今回山小屋から自宅の道楽部屋に持ち帰り再調整に挑戦しました。今回このブログを投稿するきっかけは 山小屋には中国製 300Bp-p アンプがありますがほとんど使用していません。その真空管を使って 2A3 s を 300B s に組み換え用と思い立ったのでドライブ回路の設計となったわけです。300B は 2A3 よりもドライブ電圧が高いためドライブ回路の実験の報告です。
10年ほど前に組み立てたため なぜこのような配線および数値になったかは記憶が不確かです。そこで基本に返り見直しました。
改修前のデーター
B0: 437V B1:420V B2:L.244V R.244V B3:191V
V1 5814A SRPP B3:=P1L,191V P1R,191V P2: L.97.5V R.99.3V Ek:L.3.390V R.3.37V Ik: 3.3mA
V2 12A-X7 SRPP B2:=P1 L.213V, R.216V P2: L.104.6V R.101.9V Ek:L.0.96V R.0.92V Ik: 0.355mA
V3 2A3 Class A Ep: L.420V R.420V Eg: L.105V R.102V Ek: L.160V R.156V Ik: L.56.7mA R.55.8mA Rk:2840Ω Ep-k.L:260V Ep-K.R:264V
V1 5814A を12A-X7 に変更 V2 12A-X7 を 5814A に変更 そのため B2,B3, の分圧抵抗値の変更 B2 から 2A3 カソードへのバイアス抵抗変更。82KΩ ⇒30KΩ
変更後のテーター
B0: 440V B1:423V B2.L:226V B2.R:226V B3:267V
V1 12A-X7 SRPP B3:=P1.L:266V P1.R:266V P2.L:136V P2.R:136V Ek.L:1.18V Ek.R:1.22V Ik:0.42mA
V2 5814A SRPP P1.L:266V P1.R:266V P2.L: 115V P2.R: 117V Ek.L:3.99V Ek.R:3.95V Ik: 4mA
V3 2A3 Class A Ep.L:405V Ep.R:405V Eg.L:115V Eg.R:117V Ek.L:160V Ek.R:162V Ik.L:60.5mA Ik.R:61.2mA Rk:2130Ω Ep-K.L:245V Ep-k.R:243V
上記データーが得られました。2A3 Lチャンネルでは プレート電圧 405V - カソード電圧 160V = 245V(Ep-k) カソードバイアス電圧は カソード電圧 160V - グリッド電圧 115V = 45V(Ek-g) Ik カソード電流 60.5mA と読み取れます。
上記数値となるように各部の抵抗値変更作業により追い込みました。2A3 規格表のデーターとよく似ています。異なるのは Ep-k の電圧が5Vほど不足ですが誤差の内と思います。ほぼこの回路では真空管規格表のような数値になっています。この状態で音楽を鳴らしましたが違和感は感じません。このアンプは シングル用 アウトプットトランスを使います。採用したのは 旧タンゴ U-808/20W型 のユニバーサルトランスを採用したため 負荷抵抗値の設定により2次巻き線のインピーダンスに多少使いにくい点があります。2A3 ではRLを2.5KΩとして使いますので 二次巻き線インピーダンスは 4Ω と 8Ω しか取り出せません。出力端子には 8Ω だけとしてあります。NFB の使い方も注意が必要です。ドライブ段が2段であれば 二次巻き線の極性を逆接続としなければ NFB をかけることができません。トランス購入時添付されていた取扱説明書に明記されています。
上図はドライブ回路と電力増幅管付近の画像でする10Kと明記してあるのは NFB 抵抗です。ソケット仕様としてあるため抵抗器の取り換えで簡単にレベル調整できる構造としてあります。
SRPP 増幅回路の特に出力側端子の電圧変更作業は SRPP 回路は各真空管 Ep-k 電圧は供給電圧の半分となります。仮に 100V 出力時 110Vに変更するには B 電圧を変化分の2倍の電圧 20V の供給電圧を上昇させることにより変更できます。その場合元の電圧は結構高い電圧に設定していますので フィルター回路の抵抗値変更で出力電圧を変更できます。
当時タンゴ製トランス購入時カタログには価格表は記載されていません。別紙価格表が記載されたものが同梱されていました。左から 昭和60年11月1日発行 中 平成4年3月21日発行 右 平成6年12月21日 発行です。X-5P 出力トランスを例にとると価格は \29,800- \45,510- \48,600- と値上がりです。この価格は旧タンゴ時代の価格です。現代では ISO となっていますが同等品は見つかりません。各社トランスの価格も上昇し たやすく真空管アンプ工作ができません。2A3 s のアンプで使った OPT U-808 の価格では \6,980- \11,180- \11,940- と価格上昇しています。
古いオーディオ雑誌についても紙ベースで数種類ですが保管しています。その書籍の記述にはドライブ回路に使われる真空管の実働するための 各部定数が記載されており その値をもとに各電極に接続する抵抗器・コンデンサーの容量を決定し動作テストをしました。
参考としてそのデーターを見苦しいと思いますが抜粋して掲載します。浅野勇著 魅惑の真空管アンプ下巻より転用
この項目まで閲覧された方は相当のマニアと思います。くだらない内容でしたが多少とも真空管アンプを工作するに多少のアドバイスとなればと思い投稿しました。不明な点があるようでしたら コメント欄に投稿ください。可能な限りほかのブログ同様に回答しています。的確な回答できない場合はご容赦ください。
by musenan sennin (無銭庵 仙人)
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